前回載せたラ・ラ・ランドのカリカチュアがFacebookで「いいね」をたくさんもらったので、いい気になって、もう一度母娘でカリカチュアに挑戦。でも何を描こうか、お題がなかなか決まらない。ジェネレーションギャップの大きい母娘は、同じ映画やTV番組を観ていないのだった。やっと決まったのが、私のお気に入りのTVシリーズThe Office。これなら、コッタも何度か観たことがある、ということで接点があった。The Officeの主人公Michael ScottとDwight Schruteを描くことにした。
この絵を描き終わった頃、コッタはシカゴの美大、SAICへ出発する準備で慌ただしくしていた。真夏の東京で、シカゴの冬に備えてセーターやダウンジャケットをスーツケースに詰めていた。
8月、いよいよ出発。私も「見送りの旅」でシカゴに一週間ほど付き合うことにした。
大学の寮はシカゴ美術館に近い中心街にあり、買い物も交通も便利で治安も比較的良く、安心した。寮といっても広いロフト付きのアパートを5人でシェアするカタチで、キッチンは日本の我が家よりもずっと広く、大きなオーブンもあって充実していた。9階のコッタの部屋からの眺めは最高で、向かいには世界最大級のハロルド・ワシントン図書館を見下ろしていた。こんな所で毎日アートができるなんて、羨ましい。ママがここに住みたいよ〜。
生活環境は申し分なく、友達にも恵まれ、さぞ充実した大学生活を送っているかと思ったら、一ヶ月もたたないうちに、「どうもこの学校が合わない」と言い出した。SAICはファインアートがメインで、どのクラスもコンセプチュアルな授業ばかり。いつまでたっても技術が身に付くようなデッサンやペインティングのクラスが取れないと言う。「コンセプトが先、技術は後から」というカリキュラムらしい。そして、幅広い分野を専攻できることで有名な学校なのに、イラストレーションの専攻はできないそうだ。
次の学期の授業のスケジュールを受け取った時、コッタは「決心した」と連絡してきた。「今の学校を辞めて、カリフォルニアのArt Centerに行く」と。
高校では、かなりのハードスケジュールの中で美大の受験を乗り越え、待ちに待った大学生活のスタートのはずだった。それがたった一学期で、ふりだしに戻ってしまった。これからまたArt Centerの出願に向けて、新たなポートフォリオを作成することになった。
コッタはシカゴの真冬を経験しないまま、クリスマス前に東京に戻って来た。
Art Centerでやっていけるだけのポートフォリオを準備するのは、そう簡単ではない。Schoolismというオンラインのコースを自主的に受講しながら、週に何度かは、私と一緒にライフドローイングとペインティングのスタジオに通うことになった。
こうして思いもよらず、母としては、ちょっと夢のようなアート三昧の日々が始まった。
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